1947年の児童福祉法制定を機に設置された乳児院の当初の目的は、戦災孤児や、栄養・衛生上の問題による発育不良、感染症などから子どもたちを保護するものでした。その後、70余年にわたり家庭の様々な事情で家族と一緒に暮らすことができない赤ちゃんや幼児とその家族を支え続けてきました。少子高齢化等で一時期はその数が114か所まで減少した乳児院ですが、それ以降は時代の移り変わりとともに社会情勢を反映して20か所以上増えています。
近年は本来の「乳幼児の養育」に加えて、目まぐるしく変わる社会情勢や家族形態・価値観・多様性・地域性などに合わせて、「家族への養育支援」「病虚弱児や障害児の養育にともなう医療機関との連携」「被虐待児の保護とケア」「里親とのパートナーシップ形成」「地域の子育て支援」「一時保護機能の充実」「入所前から退所後のサポート」など、子どもたちだけでなくその家族が地域で幸せに過ごしていくための支援を担い、未来を見据えて専門性を高めてきました。
これからも乳児院は培ってきたその専門的機能をさらに高めていくことによって、より地域に根ざした総合的かつ包括的な『乳幼児総合支援センター』としての役割を果たしていきます。
全乳協の『乳幼児総合支援センター』提言はこちらをご覧ください
乳児院倫理綱領(PDF)
より適切なかかわりをするためのチェックポイント(PDF)
乳児院における「権利擁護」とは~日頃の養育を振り返る際のポイント~(PDF)
乳児院は新生児だけでなく、小学校就学前までの乳幼児であればご利用できますが、基本的には都道府県・政令市・中核市等に設置されている児童相談所に相談していただく必要があります。乳児院は全国に144か所(2019年度)あり、約3,000名の乳幼児が利用しています。何らかの疾患や障害があったり、家族との別れで心が傷ついたりしている子どもたちに専門性の高い医療的ケアや心理的ケアを提供できることも乳児院の強みです。
(データは平成30年度全国乳児院入所状況実態調査によるもの)
乳児院を利用する理由は、どれも子ども側の事情ではなく家族や家庭に起因するものです。児童相談所・行政機関・医療機関との連携や協働により総合的なサポートができることも乳児院の強みです。
一方で、乳児院から退所する子どもたちの行き先は、約半数が家庭、2割近くが里親家庭、他は児童養護施設など次の施設となっています。その際にも家庭であれば面会・外出・外泊、里親家庭であればマッチング、施設であれば事前交流など、次の養育者に“子どもの育ち”のバトンを『つなぐ』ことを常に意識した取り組みを行っています。
(データは平成30年度全国乳児院入所状況実態調査によるもの)
■虐待
■家族の精神疾患
■経済的困難
■離別別居
■母未婚
■家族の疾病
■その他
■家庭引取
■里親委託・養子縁組
■児童養護施設等への措置変更
■その他